阿部喜の歴史

津市指定有形文化財 阿部家住宅

阿部家は、江戸時代から伊勢街道沿いに店を構える商家で、もとは酒造業でしたが、明治時代に味噌醤油醸造業に変わっています。その主屋は典型的な大店の商家建築であり、市の文化財に指定されています。 主屋は伊勢街道に面して東向きに建ち、北側にある庭を高塀@で囲んで、主屋の南側には倉庫などに使われた南棟が付属しています。また、主屋の西側には庭を挟んで茶室があり、さらにその奥にはかつて製造用の大きな蔵がありました。 主屋の屋根の左右端には繁栄のしるしである「卯建A」があがり、軒先に下がる「おおだれB」など、その建築意匠は大店の格式と貫禄を今に伝えます。内部は、「みせ」Cから裏まで続く通り土間となっていて、これに面した北側に各部屋が3列ほど並んでいます。この中で最も格式の高い部屋は、付書院をもつ8畳間の角屋座敷Dで、東隣の8畳間とともに数寄屋造となっていて、その境にある欄間には糸巻を象った彫刻が見られますE。

主屋の建築時期を示す資料はありませんが、建築様式から江戸時代後期と言われていて、建築後およそ200年以上が経過しています。建築当初は、屋根や庇が板葺であったと考えられ、江戸時代末期にはこれらが瓦葺となり、南棟を増築するときなど、大きく改修されてほぼ現在見ることのできる姿になりました。この背景には、津藩の酒造委託を受けるなど酒造業の成功があったと考えられます。その後も明治時代に茶室、文庫蔵、離れが増築されています。